輸入大粒ブルーベリーの今後について

CHITA FRUIT VILLAGE

輸入大粒ブルーベリーについての考察

※この資料は以前にブルーベリー栽培されてる団体が来園した際に作成したメモです。

輸入ブルーベリーについて(2026作成)

■大粒ブルーベリーの「黒船」が、中国からやってくる。

しかも、ただ安い中国産ブルーベリーが入ってくる、という話ではない。

大粒、硬肉、クリスピー。

日本でも高品質品種として知られる「Eureka Sunrise(ユーリカ)」が、いま中国でとんでもない規模で生産されている。

中国産ブルーベリーというと、安価な冷凍原料をイメージする人も多いかもしれない。

でも、これから日本に入ってくる可能性があるのは、それとはまったく違う。

 

施設+基質栽培で作られた、大粒の生食用ブルーベリーだ。

 

なぜ、こんなことになったのか。

話は2010年代前半までさかのぼる。

世界的なベリー企業Driscoll’sは2012年前後、中国でのブルーベリー生産に乗り出し、雲南省を主要な生産拠点に選んだ。

当時の中国には、現在のような高品質な生食ブルーベリー産業はまだほとんどなかった。

そこへ持ち込まれたのが、

・海外育種会社の優良品種
・ココピートなどを使った基質栽培
・点滴灌水と液肥管理
・雨よけやハウスを使った施設栽培
・大量の苗を供給する育苗システム
・契約農家と統一ブランドによる販売

という、現在ではおなじみの高品質ブルーベリー生産システムだった。

 

雲南では土壌や排水などの問題もあり、土耕ではなく基質栽培が積極的に採用された。

 

結果的にこれが、現在中国で猛烈な勢いで広がっている「高密度・高投入型ブルーベリー栽培」の一つのモデルになった。

 

Driscoll’s自身も150以上の生産者と組み、雲南で年間約3万トンを生産する規模まで拡大した。

 

そして、この話で重要になるのが**「Eureka Sunrise」**。

正式な品種名はRidley 1602。

オーストラリアのMountain Blue Orchards(MBO)が育成したサザンハイブッシュ系品種で、非常に早生、低温要求量が少なく、大粒、硬肉、クリスピー。

暖地で高品質なブルーベリーを早出しするには、かなり魅力的な品種だ。

 

Mountain Blueは2014年、中国でDriscoll’sにこの品種を独占的にライセンスした。

ところが数年後、中国国内の苗業者からEurekaが出回り始める。

ここからが、なかなかすごい話になる。

 

スペインの育種会社Planasaが、自社のブルーベリー品種「Blue Maldiva」が雲南で違法増殖されていることを疑い、調査員をブルーベリー農家に偽装して苗業者へ接触させた。

すると苗業者側は、Blue MaldivaだけでなくEurekaも持っていると説明。

 

さらにWeChat上では、そのEurekaについて、

「Driscoll’sの農場から挿し穂を手に入れた」

という趣旨のやり取りまで残していた。

Planasa側は実際に苗を購入。

 

そしてDNA鑑定を行った。

そのDNA結果と苗業者自身の発言が裁判の証拠となり、中国の裁判所は無許諾での増殖を認定。

苗の廃棄と損害等の支払いを命じた。

つまり、

「中国で似たブルーベリーが作られるようになった」

という程度の話ではない。

 

少なくとも一部では、正規に導入されたEurekaの植物体が外へ流出し、栄養繁殖によって増殖されたことを裏付ける証拠まで出ている。

 

Eurekaの育成者であるMountain Blue自身も動いた。

 

中国でEureka(Ridley 1602)の育成者権を取得し、無断増殖業者を提訴。

2024年12月には中国の裁判所が、雲南省の苗業者による無断繁殖・増殖・販売を認定し、販売停止や損害等の賠償を命じている。

 

Driscoll’s自身も中国で20件以上の知財関連訴訟を起こしている。

 

ただ、中国のブルーベリー産業がここまで巨大になった理由を「品種を盗まれたから」だけで説明するのも正確ではない。

むしろ重要なのはその後だ。

 

Driscoll’sが中国で高品質ブルーベリー市場を作った。

売れた。

 

「ブルーベリーは儲かる」と分かった。

 

すると中国企業が一斉に参入した。

農業企業だけではない。大手企業が大規模農園を作り、地方振興策にもなり、金融機関からブルーベリー向けの資金まで入るようになった。

 

そこに基質栽培、施設栽培、点滴灌水、優良品種が組み合わさった。

 

結果、中国のブルーベリー生産量は2010年から約25倍。

 

2021年には米国を抜いて世界最大の生産国となり、2025年には栽培面積約10.5万ha、生産量約81万トンに達したとされる。

 

当然、ここまで作れば価格は下がる。

 

2026年春には250gパックが30元前後から19.9元程度まで下落した例もあり、かつて高級果物だったブルーベリーが、中国では「蓝莓自由(ブルーベリー自由)」と呼ばれるほど身近な果物になってきた。

 

流れを並べると分かりやすい。

Driscoll’sが高品質ブルーベリー市場を作る
↓
基質・施設栽培が普及する
↓
中国企業が大量参入する
↓
Eurekaなど海外育成品種も広がる
↓
資本が入り、生産能力が爆発する
↓
供給過剰になる
↓
価格が下がる

 

そして、ここまでなら「中国国内の話」で終わる。

問題はここからだ。

 

国内で作り過ぎて価格が下がれば、当然、次は海外市場を探すことになる。

しかも中国で増えているのは、昔イメージしたような加工向けのブルーベリーではない。

 

Eurekaをはじめとした、大粒・硬肉で輸送性にも優れた生食用品種。

 

そして日本は中国から近く、ブルーベリーの販売単価も高い。

 

となれば、中国の大規模ブルーベリー産業が日本市場を狙わない理由はあまりない。

 

実際、日本のブルーベリー輸入を見ると、その動きはすでに数字にも表れ始めている。

 

中国産ブルーベリーの話を「安い輸入品が増える」というだけで考えると、本質を見誤ると思う。

 

これから競合する可能性があるのは、

中国の巨大資本が、施設+基質栽培で大量生産する、大粒・硬肉・クリスピーなプレミアムブルーベリー。

 

となると日本のブルーベリー農家にとって、

「国産だから」
「大粒だから」
「新品種だから」

だけでは、いずれ差別化にならなくなる。

 

大粒ブルーベリーの「黒船」。

思っていたより早く、日本まで来るのかもしれない。